【運送業実務ブログ】新人ドライバーをすぐ乗務させていませんか―初任教育と初任診断の実務
人手不足の運送会社では、採用したドライバーを一日でも早く現場に出したいところです。しかし、トラックの運転経験がある人を採用した場合でも、直ちに事業用トラックへ乗務させてよいとは限りません。
一般貨物自動車運送事業者には、一定の初任運転者に対する特別な指導と、対象者への初任診断が求められます。巡回指導や監査では、「研修を行った」という説明だけでなく、対象者の判定、実施時期、教育内容、実施時間、実技記録などを具体的に確認できる状態が重要です。
初任教育の対象は「業界未経験者」だけではありません
初任運転者に対する特別な指導の対象となるのは、一般貨物自動車運送事業者などが運転者として常時選任するために新たに雇い入れた人のうち、その会社で初めて事業用自動車に乗務する前3年間に、他の一般貨物自動車運送事業者などで運転者として常時選任されたことがない人です。
したがって、普通車や自家用トラックの運転経験が豊富でも、それだけで対象外になるわけではありません。反対に、直近3年間に他の一般貨物事業者で常時選任されていた人は、初任運転者の特別な指導の対象外となる場合があります。
採用時には、履歴書の「トラック経験あり」という記載だけで判断せず、前職の事業区分、常時選任されていた期間、最後に事業用トラックへ乗務した時期を確認しましょう。必要に応じて前職の在籍・選任状況を確認できる資料を残しておくと、後日の説明がしやすくなります。
特別な指導は「座学15時間+実技20時間」が基本
一般貨物の初任運転者に対する特別な指導では、法令、安全運転、日常点検、トラックの構造上の特性、貨物の正しい積載・固縛などについて、合計15時間以上の指導が必要です。
さらに、実際に事業用自動車を運転させ、道路や交通状況に応じた安全な運転方法を添乗などにより指導する実技を、20時間以上行います。
特に、日常点検、車高・視野・死角・内輪差・制動距離、積載・固縛に関する事項は、実車を用いた指導が求められます。動画教材を視聴させて署名をもらうだけでは、必要な教育をすべて実施したことにはなりません。
会社で教育計画を作るときは、次のように区分して管理すると実務的です。
- 座学・実車を用いた指導:実施日、項目、時間、講師、使用教材
- 安全運転の実技:実施日、運転時間、車両、走行経路、指導者、指導内容
- 教育後の確認:理解度、課題、追加指導の内容
「同乗期間が20時間あった」というだけでなく、その時間に何を指導し、本人のどのような課題を確認したかまで記録しておくことが大切です。
原則は初乗務前、例外を安易に使わない
初任運転者に対する特別な指導は、その会社で初めて事業用自動車に乗務する前に実施するのが原則です。やむを得ない事情がある場合は、乗務開始後1か月以内に実施できる取扱いがありますが、単なる人手不足や繁忙を理由に当然に後回しにできるものではありません。
事故発生後や巡回指導の直前に教育記録を作ることはできません。採用が決まった段階で教育担当者、車両、実技時間、乗務開始予定日を組み合わせた計画を作り、完了状況を運行管理者が確認してから単独乗務へ移行する仕組みが安全です。
初任診断は特別な指導とは別に判定します
初任診断は、特別な指導とは別の制度です。新たに雇い入れた運転者のうち、その会社で初めて事業用自動車に乗務する前3年間に初任診断を受診していない人には、国土交通大臣が認定した機関で初任診断を受診させる必要があります。
受診時期も初乗務前が原則で、やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内とされています。前職で初任診断を受けているという申告があった場合は、診断票などで受診日を確認し、3年以内かどうかを判断しましょう。
また、初任診断は「受けさせれば終わり」ではありません。運行管理者は診断結果を確認し、本人の運転特性に応じた具体的な指導へつなげる必要があります。診断結果と追加指導の記録を分断せず、一連の安全管理資料として整理しておくことが重要です。
採用時には事故歴の確認も必要です
運転者を新たに雇い入れた場合、無事故・無違反証明書や運転記録証明書などにより、雇入れ前の事故歴を把握し、事故惹起運転者に該当するかを確認する必要があります。
初任運転者であるかどうかの確認だけでは不十分です。事故歴によっては、事故惹起運転者として別の特別な指導や特定診断が必要になる場合があります。採用時の確認票には、運転経験、初任診断の受診歴、事故歴の確認をそれぞれ別項目で設けると漏れを防げます。
巡回指導に備えて残しておきたい資料
教育の実施状況を説明できるよう、少なくとも次の資料を一人ごとに整理しておきましょう。
- 初任運転者に該当するかを判定した記録
- 前職での選任歴や初任診断の受診歴を確認した資料
- 特別な指導の実施計画と実施記録
- 教材名、教育項目、実施時間、指導者が分かる記録
- 実技20時間の運転時間、車両、経路、指導内容が分かる記録
- 初任診断の診断票と、結果を踏まえた個別指導の記録
- 事故歴を確認した証明書など
様式の名称や提出を求められる資料は、地方運輸局、運輸支局、適正化実施機関の確認方法によって異なることがあります。自社の営業所を管轄する窓口の最新資料も確認してください。
まとめ
新人ドライバーの教育で重要なのは、「大型免許がある」「前職でも運転していた」という印象ではなく、法令上の対象者を資料に基づいて判定することです。
特別な指導の対象であれば、原則として初乗務前に15時間以上の指導と20時間以上の実技を行います。初任診断の要否は別に判定し、診断結果を個別指導へ反映させます。採用日から単独乗務日までの手順を標準化しておくことが、事故防止と巡回指導・監査対策の両方につながります。
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