【運送業実務ブログ】運賃・料金を変えたら30日以内―一般貨物運送事業者の届出漏れを防ぐ実務
燃料費、人件費、車両価格などの上昇を受け、荷主との運賃交渉を進める運送事業者が増えています。しかし、社内の料金表や運賃の適用方法を変更した後、「荷主への案内は済ませたが、運輸支局への届出を忘れていた」ということはありませんか。
一般貨物自動車運送事業者が運賃・料金を設定または変更した場合は、貨物自動車運送事業報告規則に基づき、原則として設定・変更後30日以内に届出が必要です。運賃改定を営業部門だけの仕事にせず、許認可管理と連動させることが重要です。
届出が必要になる基本的な場面
届出の対象は、運賃額そのものを変更した場合だけではありません。届出済みの運賃・料金について、次のような変更を行う場合も確認が必要です。
- 距離制運賃や時間制運賃の金額を変更する
- 待機時間料、積込料、取卸料などの料金を新設または変更する
- 休日割増、深夜・早朝割増などの割増率を変更する
- 燃料サーチャージを導入し、基準価格や算定方法を変更する
- 運賃・料金の適用地域や適用方法を変更する
一方、個別の荷主との交渉結果がすべて直ちに届出対象になると一律に判断できるわけではありません。自社が届け出ている運賃表・料金表・適用方法の範囲内の取引なのか、それ自体を変更するのかを整理する必要があります。判断が難しい場合は、実施前に管轄運輸支局へ確認しましょう。
期限は「変更前」ではなく「変更後30日以内」
一般貨物自動車運送事業の運賃・料金の設定・変更は、原則として事後届出です。設定または変更した日から30日以内に提出します。
実務上は、荷主との合意日、社内決裁日、新運賃の適用開始日を混同しやすいため注意が必要です。届出書には実施年月日を記載するため、「いつから新しい運賃・料金を適用したのか」が分かる社内記録を残してください。
月末締めの請求業務が終わってから届出を検討すると、すでに30日を経過していることがあります。運賃改定を決定した時点で、届出担当者と提出予定日を決めておくと安全です。
主な提出書類
一般的には、次の書類を準備します。
- 運賃料金設定(変更)届出書
- 変更後の運賃表・料金表
- 運賃料金適用方
- 割増率や燃料サーチャージの算定方法が分かる資料
- 新旧対照表や変更理由を示す資料(提出先から求められる場合)
様式、必要部数、添付資料、提出方法は地方運輸局・運輸支局により案内が異なる場合があります。必ず管轄運輸支局が公開している最新様式を使用し、郵送、窓口、電子申請など利用できる提出方法を確認してください。
「標準的な運賃」に関する届出も確認する
国土交通省が告示する標準的な運賃を活用する場合も、自社の届出状況と適用方法の確認が必要です。
国土交通省の公式Q&Aでは、令和2年告示の標準的な運賃を届け出た事業者が令和6年告示の標準的な運賃を適用する場合、新たな届出は不要とされています。一方、令和2年告示の運賃を引き続き適用する場合には、その旨を記載した届出が必要とされています。
ただし、標準的な運賃を基礎にしながら自社独自の料金、割増率、燃料サーチャージなどを設ける場合は、その内容に応じた届出の要否を個別に確認する必要があります。「標準的な運賃を使っているから手続は不要」と思い込まないことが大切です。
届出漏れが起きやすい社内体制
次のような会社では、届出漏れが起こりやすくなります。
- 営業担当者だけで荷主との運賃改定を進めている
- 経理担当者が料金表を変更しても、許認可担当者へ連絡していない
- 燃料サーチャージを請求書に追加したが、適用方法を整理していない
- 過去の届出書や運賃表の保管場所が分からない
- 複数営業所で異なる料金運用をしている
まず、現在の届出書と実際に使用している運賃表・見積書・請求書を照合してください。内容が一致していなければ、いつ、どのような変更をしたのかを確認し、管轄運輸支局へ相談したうえで必要な対応を進めます。
実務で使える運賃改定チェック
- 現行の届出内容を確認する
過去に提出した届出書、運賃表、料金表、適用方をそろえます。 - 変更点を明確にする
金額、料金項目、割増率、適用地域、適用方法を新旧で比較します。 - 実施年月日を決める
荷主への通知日ではなく、実際に新運賃を適用する日を明確にします。 - 管轄運輸支局の最新様式を確認する
地域ごとの提出先、部数、添付資料、提出方法を確認します。 - 30日以内に提出する
提出控えと受付記録を保存し、次回変更時に参照できるようにします。 - 営業・経理・許認可管理を連携させる
運賃変更を決定した際に、届出担当者へ自動的に情報が届く社内ルールを作ります。
まとめ
運賃・料金の改定は、荷主との交渉や請求書の変更だけで完了するものではありません。一般貨物自動車運送事業者が運賃・料金を設定または変更した場合は、原則として実施後30日以内の届出が必要です。
金額だけでなく、待機時間料、積込料、取卸料、割増率、燃料サーチャージ、適用方法の変更も確認対象になります。現在の届出内容と実際の請求内容にずれがないか、定期的に点検しておきましょう。
運送業の許認可・変更手続・巡回指導対応については、運送業専門のIcan行政書士事務所/運送業許可・更新サポートセンターへご相談ください。ホームページ:https://ican-office.com/ ご相談は、Ican行政書士事務所/運送業許可・更新サポートセンター 代表・矢内までお気軽にご相談ください。TEL:070-1389-0777