【運送業実務ブログ】巡回指導で確認される36協定―締結だけでは不十分、届出と有効期間を再点検
一般貨物自動車運送事業の巡回指導では、点呼簿や運転日報だけでなく、労務関係の書類も確認されます。その代表が、時間外労働・休日労働に関する「36協定」です。
社内で協定書を作成していても、労働基準監督署へ届け出ていない、すでに有効期間が切れている、現在の時間外労働の実態と協定内容が合っていない場合は、適切な状態とはいえません。
運送会社では、ドライバーの時間外労働の上限規制と改善基準告示の両方を踏まえて管理する必要があります。巡回指導の直前だけでなく、毎年の更新時に内容を確認しましょう。
巡回指導では「締結」と「届出」の両方を確認
地方貨物自動車運送適正化事業実施機関による巡回指導の労基法関係の確認項目には、36協定が締結され、届け出られているかという項目があります。
法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合は、使用者と労働者側で36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
社内に署名済みの協定書があっても、監督署への届出が済んでいなければ足りません。また、電子申請をした場合も、受付結果を確認できる控えを保存しておくことが重要です。
確認したい基本書類は次のとおりです。
・36協定書
・労働基準監督署へ提出した36協定届の控え
・受付印のある控え、または電子申請の受付・到達を確認できる資料
・労働者代表の選出過程が分かる記録
・就業規則
・出勤簿、タイムカード等の勤怠記録
・賃金台帳
・運転日報やデジタコ記録
36協定だけを単独でファイルするのではなく、実際の労働時間を確認できる記録と整合しているかを点検してください。
有効期間切れに注意
36協定には有効期間があります。一般的には1年間で締結・届出を行う会社が多く、更新時期を過ぎたまま時間外労働や休日労働をさせると、協定のない状態が生じるおそれがあります。
毎年同じ時期に更新していても、担当者の退職や本社移転、給与計算業務の外注化などをきっかけに、更新漏れが起きることがあります。
次の項目を一覧表で管理すると、期限切れを防ぎやすくなります。
・協定の対象期間
・起算日
・締結日
・届出日
・所轄労働基準監督署
・次回更新の準備開始日
・社内担当者
・届出控えの保存場所
更新手続は期限当日ではなく、少なくとも1か月程度前から準備を始めると安心です。
労働者代表の選び方にも注意
36協定を締結する労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する人です。
会社が一方的に指名した管理監督者や、親睦会の代表者をそのまま労働者代表にすることは適切ではありません。36協定を締結する代表者を選ぶことを明らかにし、投票、挙手、労働者の話し合いなど、民主的な手続で選出する必要があります。
巡回指導で選出過程の資料を求められたときに説明できるよう、次のような記録を残しておきましょう。
・選出の告知文
・投票や挙手の結果
・選出日
・選出された人の氏名
・選出目的が36協定締結の代表者であること
代表者の氏名だけが記載された書類では、適正な選出だったか確認できない場合があります。
トラック運転者用の様式を確認
2024年4月から、自動車運転者にも時間外労働の上限規制が適用されています。トラック運転者について特別条項を設ける場合でも、時間外労働の上限は年960時間です。
現在は、自動車運転者を対象とする36協定届の様式が用意されています。一般の労働者と自動車運転者が同じ事業場にいる場合、対象者と適用する様式を正しく整理する必要があります。
原則の時間外労働である月45時間・年360時間以内とする場合と、臨時的な特別の事情によりこれを超える特別条項を設ける場合では、使用する様式や記載内容が異なります。
古い様式を毎年コピーして使っていないか、現行様式に合っているかを厚生労働省や所轄労働基準監督署の案内で確認してください。
36協定と改善基準告示は別々に守る
36協定の範囲内であれば、どのような勤務をさせてもよいわけではありません。
トラック運転者には、時間外労働の上限規制に加えて、改善基準告示による拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間などの基準があります。
2024年4月以降の主な基準には、次のようなものがあります。
・1年の拘束時間は原則3,300時間以内
・1か月の拘束時間は原則284時間以内
・1日の休息期間は、継続11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
・時間外労働は、特別条項がある場合でも年960時間以内
例外や特例を適用する場合には条件があります。数字だけを当てはめず、運行内容、労使協定、年間の適用回数などを確認してください。
36協定を守っていても改善基準告示に違反する場合があり、反対に、拘束時間が改善基準内でも36協定を超える時間外労働があれば問題になります。
巡回指導前の確認手順
36協定の点検は、次の順序で行うと漏れを見つけやすくなります。
1.有効期間内の36協定届があるか確認する
2.監督署へ届出済みであることを確認する
3.労働者代表の選出手続を確認する
4.自動車運転者に対応した現行様式か確認する
5.協定の上限時間と勤怠実績を照合する
6.運転日報、デジタコ、点呼記録、賃金台帳との時刻の不一致を確認する
7.改善基準告示の拘束時間・休息期間等も別に確認する
8.更新予定日と担当者を決める
形式的に書類がそろっているだけでなく、記録相互の整合性が重要です。出勤簿では退勤しているのに、その後も運転日報やデジタコに運行記録があるといった不一致は、実態確認が必要になります。
就業規則もあわせて点検する
巡回指導では、就業規則が制定され、必要な届出がされているかも確認項目となります。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が必要です。人数は会社全体ではなく、原則として事業場単位で判断します。
10人未満で法律上の届出義務がない場合でも、労働時間、休日、服務規律、賃金などを明確にするため、就業規則や社内規程を整備しておくことは実務上有効です。巡回指導時の具体的な確認方法は、地域の適正化事業実施機関へ確認してください。
指摘を受けたら期限内に改善報告を
巡回指導で36協定の未届、有効期間切れ、就業規則の不備などを指摘された場合は、指導内容に沿って速やかに是正し、必要な資料を添えて改善報告を行います。
改善報告の期限や提出方法は、通知書と地域の適正化事業実施機関の案内を確認してください。たとえば神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関は、改善指導を受けた場合、巡回指導日から2か月以内に挙証資料を付けて文書で回答するよう案内しています。
地域によって提出期限や運用が異なる場合があるため、「全国一律に2か月」と決めつけないことが大切です。
まとめ
巡回指導で36協定について確認されるのは、書類の有無だけではありません。
・適正な労働者代表と締結しているか
・労働基準監督署へ届け出ているか
・有効期間内か
・現行の自動車運転者用様式に対応しているか
・実際の労働時間が協定の範囲内か
・改善基準告示も守られているか
この6点を、勤怠記録、運転日報、デジタコ記録、賃金台帳とあわせて確認しましょう。
巡回指導を控えていて何から確認すればよいか分からない、36協定や勤怠記録を含めて帳票の漏れを事前に点検したい、指摘後の改善対応を相談したいという事業者様には、Ican行政書士事務所/運送業許可・更新サポートセンターが専門家の視点で準備を支援します。
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