【運送業実務ブログ】巡回指導で確認される健康診断―受診だけで終わらせない記録・保存・事後措置の実務
一般貨物自動車運送事業の巡回指導では、運転者が健康診断を受けているかだけでなく、対象者全員への実施、記録の作成・保存、異常所見があった場合の対応まで確認されます。
「毎年、会社で健康診断を受けさせているから大丈夫」と思っていても、深夜業に従事する運転者の受診周期が合っていない、健康診断個人票がない、医師の意見聴取をしていないといった不備が見つかることがあります。
## 巡回指導で健康診断が確認される理由
トラック運転者の健康状態は、運行の安全に直結します。体調の悪化を把握しないまま乗務させれば、健康起因事故につながるおそれがあります。
巡回指導では、労務関係の確認項目として、所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正に行われているかが確認されます。単に受診結果の紙があるかを見るのではなく、会社が運転者の健康状態を継続的に把握し、安全な乗務につなげているかが重要です。
## 定期健康診断は原則として1年以内ごとに1回
常時使用する労働者には、原則として1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施する必要があります。
対象となるのは正社員だけとは限りません。雇用形態ではなく、常時使用する労働者に該当するかで判断します。パートや有期契約の運転者についても、契約期間や所定労働時間などから対象となる場合があります。
また、新たに常時使用する労働者を雇い入れる際には、雇入時の健康診断も必要です。直前の勤務先や本人から健康診断結果が提出された場合の取扱いには条件があるため、自己判断で省略せず、労働安全衛生法令に沿って確認しましょう。
## 深夜業の運転者は6か月以内ごとの確認が必要
午後10時から翌午前5時までの時間帯に常態的に勤務する運転者は、特定業務従事者として、配置替えの際および6か月以内ごとに1回の健康診断が必要になる場合があります。
夜間運行がある会社で特に多いのが、「全員、年1回の定期健康診断だけ」という不備です。
まず、点呼簿、乗務記録、勤務表、デジタコ記録などから深夜業に従事する運転者を洗い出し、対象者別に次回受診期限を管理する必要があります。深夜業の頻度や具体的な該当性に迷う場合は、所轄労働基準監督署や産業保健の専門家へ確認してください。
## 健康診断個人票は5年間保存
事業者は、健康診断の結果に基づいて健康診断個人票を作成し、5年間保存しなければなりません。
医療機関から届いた結果通知をファイルしているだけでは、法定様式に必要な事項を満たしていないことがあります。次の点を確認しましょう。
・対象者全員分がそろっているか
・受診日と受診区分が分かるか
・必要な検査項目が実施されているか
・健康診断個人票が作成されているか
・医師の意見欄が適切に記載されているか
・5年間保存できる管理方法になっているか
電子保存する場合も、必要なときに対象者別・受診日別に確認でき、巡回指導時に速やかに提示できる状態にしておくことが大切です。個人の健康情報であるため、閲覧権限や保管場所にも配慮しましょう。
## 「有所見」で終わらせず、医師の意見と就業上の措置まで確認
健康診断で異常所見があると診断された労働者については、健康を保持するために必要な措置について、医師等の意見を聴かなければなりません。一般の定期健康診断などでは、健康診断実施日から3か月以内の意見聴取が必要です。
意見を聴いた後は、その内容に応じて、次のような対応を検討します。
・通常勤務でよいか
・就業制限が必要か
・夜間運行や長距離運行を控えるべきか
・再検査や精密検査の受診を促すか
・医療機関の受診状況を確認するか
・勤務時間や業務内容を見直すか
再検査の案内を渡しただけで、その後の状況を確認していないケースも少なくありません。健康診断の結果、医師の意見、本人への通知、就業上の措置が一連の記録として追えるようにしておきましょう。
## 巡回指導前に確認したい実務チェック
巡回指導の通知が届いたら、少なくとも次の順番で確認します。
1.在籍する運転者の一覧を作る
2.各人の雇入時・定期・特定業務健康診断の該当を確認する
3.点呼簿や勤務表から深夜業従事者を抽出する
4.受診日と次回期限を一覧化する
5.健康診断個人票が全員分あるか確認する
6.有所見者について医師の意見と事後措置を確認する
7.未受診者がいれば速やかに受診予定を組む
8.記録を5年間保存できる状態に整理する
健康診断の一覧表と個人票、点呼簿・乗務記録の内容が一致していることが重要です。書類ごとに担当者が異なる会社では、総務、運行管理者、経営者が情報を共有しましょう。
## まとめ
巡回指導における健康診断の確認は、「年1回受けたか」だけでは終わりません。対象者の判定、深夜業従事者の6か月ごとの受診、健康診断個人票の5年間保存、医師の意見聴取、有所見者への事後措置までが一体です。
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