「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(改正トラック新法)とは何かーー運送業専門の行政書士が徹底解説!
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「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(改正トラック新法)とは何かーー運送業専門の行政書士が徹底解説!
「トラック新法」という言葉を耳にする機会が増えていますが、実はこれは一つの法律の名前ではありません。「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」という、よく似た名称の改正がこの数年で二段階にわたって行われており、混同されたまま語られていることが少なくありません。運送業専門の行政書士として、実際にご相談を受ける立場から、この二段階の改正を整理し、それぞれ何がいつから変わるのかを条文レベルで正確に解説します。
「トラック新法」は一つではない ─ まず全体像を整理する
「トラック新法」と呼ばれる改正は、成立時期の異なる二つの改正の総称として使われています。それぞれ正式名称・法律番号・施行日が異なるため、まずこの違いを押さえることが正確な理解の第一歩です。
| 第1弾 | 第2弾(トラック適正化二法) | |
|---|---|---|
| 正式名称 | 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律 | 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律/貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律 |
| 法律番号 | 令和6年法律第23号 | 令和7年法律第60号・第61号 |
| 成立の経緯 | 閣法(政府提出法案) | 議員立法(第217回通常国会) |
| 公布日 | 令和6年5月15日 | 令和7年(2025年)6月 |
| 主な狙い | 運送契約における取引の透明化 | トラックドライバーの経済的・社会的地位の向上 |
この記事では便宜上、前者を「第1弾」、後者を「トラック適正化二法(第2弾)」と呼んで解説します。
第1弾:令和6年法律第23号でスタートした取引の透明化
第1弾の改正は、令和7年(2025年)4月1日から実運送事業者を対象に施行され、令和8年(2026年)4月1日からは貨物利用運送事業者にも適用が拡大されます。中心となるのは、これまで口頭や慣習に頼っていた運送契約を「書面化」し、下請け構造を「見える化」する仕組みです。
書面交付義務(法第12条・第24条)
運送契約を締結する際、運賃・附帯業務の内容などを記載した書面の交付が義務付けられます。真荷主との間では法第12条第1項に基づき双方向の書面交付義務が、委託先に対しては法第24条第2項に基づき委託元からの一方的な書面交付義務が課されます。「口頭発注」が常態化している現場ほど、契約書式の整備が急務になります。
実運送体制管理簿(法第24条の5)
元請け・利用運送事業者は、実際に貨物を運んだ事業者を把握するための「実運送体制管理簿」の作成・保存が義務付けられます。法第24条の5第1項各号により、記載が義務付けられている事項は次の3点です。
- 実運送事業者の名称
- 貨物の内容および運送区間
- 請負階層(真荷主との契約から数えて何次下請けにあたるか)
これに加えて、運賃・料金、積載量、運行経路、荷待ち時間、付帯業務の内容、輸送に伴うCO2排出量などは記載が推奨される項目とされています。様式は指定されておらず、1日ごと・1運行ごとにまとめる形でも差し支えありません。
運送利用管理規程・運送利用管理者(貨物利用運送事業者向け)
令和8年4月1日からは、前年度にトラックを使用して行った利用運送に係る貨物取扱量の合計が100万トンを超える第一種・第二種貨物利用運送事業者に対し、運送利用管理規程の作成と運送利用管理者の選任が義務付けられます。なお、船舶・航空・鉄道を利用した運送分は100万トンの算定に含まれず、あくまでトラックによる取扱量のみが対象です。運送利用管理者は、事業運営上の重要な決定に参画できる管理的地位にある者から1名選任し、国土交通大臣への届出が必要です。
健全化措置(努力義務)
委託先の健全な事業運営の確保に資する取組(健全化措置)を行うことが、元請け事業者等の努力義務として定められています。運賃の適正な支払いや、下請け事業者の労務管理への配慮などが想定されています。
第2弾:トラック適正化二法(令和7年法律第60号・第61号)
第2弾は、議員立法として第217回通常国会で成立した二つの法律の総称です。第1弾が「取引の透明化」に重点を置いていたのに対し、第2弾は「ドライバーの経済的・社会的地位の向上」を明確な目的として掲げ、より踏み込んだ規制を導入します。
白トラ規制の強化と荷主等への罰則
令和8年4月1日から、緑ナンバーの許可を持たない事業者(いわゆる「白トラ」)に対して違法に運送を委託した荷主等も、新たに規制の対象となります。依頼した側にも罰則(100万円以下の罰金)が科される可能性があり、「発注先が適法な事業者かどうかを確認する責任」が荷主側に明確に課される点が最大のポイントです。
多重下請け構造の制限(努力義務)
令和8年4月1日から、元請け事業者が委託する階層を原則2次までに収める努力義務が課されます。あくまで努力義務であり、直ちに罰則を伴う禁止規定ではありませんが、実運送体制管理簿によって階層が可視化される以上、実務上は事実上の抑制効果を持つと見られます。
許可の更新制(5年ごと)
これまで一般貨物自動車運送事業の許可は、一度取得すれば無期限に有効でした。トラック適正化二法により、5年ごとの更新制が導入されます。施行時期は公布から3年以内とされており、詳細なスケジュールは今後、政令で定められる見込みです。更新の審査では、安全管理体制や法令遵守の状況が確認されるとみられ、日頃からの点呼記録・点検整備記録の整備が今まで以上に重要になります。
適正原価を下回る運賃の制限
国土交通大臣が、燃料費・人件費など事業運営に必要な費用をもとに「適正原価」を定め、これを下回る運賃・料金での契約を制限する仕組みが導入されます。こちらも施行は公布から3年以内とされています。「相場だから仕方がない」で済まされてきた低運賃契約に、法的な歯止めがかかることになります。
施行スケジュール一覧
| 時期 | 施行される主な内容 |
|---|---|
| 令和7年(2025年)4月1日 | 書面交付義務/健全化措置(努力義務)/実運送体制管理簿の作成・保存(実運送事業者) |
| 令和8年(2026年)4月1日 | 貨物利用運送事業者への義務拡大(書面交付・運送利用管理規程・運送利用管理者)/白トラ規制の強化と荷主等への罰則/多重下請け構造の制限(2次までの努力義務) |
| 公布から3年以内(〜2028年頃) | 許可の更新制(5年ごと)の導入/適正原価を下回る運賃・料金の制限 |
運送事業者が今からやるべきこと
- 口頭発注が残っている取引先について、簡単な発注書・請書のひな形を用意する
- 下請け・協力会社への委託階層を棚卸しし、原則2次以内に収まっているか確認する
- 実運送体制管理簿の作成に備え、自社の許可番号・車両情報などをすぐ提示できる体制を整える
- 取引先(荷主・元請け)が正規の緑ナンバー事業者かどうかを確認する運用を徹底する
- 点呼記録・車両点検記録など、将来の許可更新審査を見据えた日常的な記録習慣をつける
- 燃料費・人件費など実費を可視化し、適正原価を意識した運賃交渉の材料を準備する
まとめ
「トラック新法」は単一の法律ではなく、令和6年の第1弾(取引の透明化)と、令和7年のトラック適正化二法(ドライバーの地位向上)という、目的の異なる二段階の改正から成り立っています。すでに施行済みの項目と、これから施行される項目が混在しているため、「まだ先の話」と決めつけず、自社にとって何がいつから義務になるのかを正確に把握することが重要です。個別の許可・契約・法令適用については、最新の公布内容や政令の内容を踏まえたうえで、専門家にご確認いただくことをおすすめします。
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