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霊柩運送事業者も対象です|「トラック新法」(改正貨物自動車運送事業法)でこれから何が変わるか

霊柩運送事業者も対象です|「トラック新法」(改正貨物自動車運送事業法)でこれから何が変わるか

霊柩運送事業・寝台車事業を営む皆さまにとって、「トラック新法」は無縁の話ではありません。むしろ、葬儀社との取引構造や小規模事業者が多いという業界特性ゆえに、一般の運送業以上に対応が求められる部分があります。本記事では、貨物自動車運送事業法の改正内容を整理したうえで、霊柩事業の現場に当てはめて解説します。

なぜ霊柩事業者がこの改正を知るべきか

背景にあるのは、いわゆる「物流の2024年問題」です。トラックドライバーの時間外労働規制強化により担い手不足が深刻化し、多重下請け構造や不当に低い運賃が現場の処遇を圧迫しているという問題意識が、国全体で共有されました。深夜対応や長距離搬送が多い霊柩・寝台搬送の現場も、構造的には同じ課題を抱えています。

今回の改正には罰則を伴う規制も含まれ、その対象は運送事業者だけでなく依頼する側の葬儀社等にも及びます。制度を正しく理解しておくことは、取引先への説明力や信頼関係の構築という面でも大きな武器になります。

「トラック新法」の全体像 ─ 二段階の改正

「トラック新法」という呼び方は通称で、実際には二段階、複数の法律から成り立っています。

第1弾:令和6年法律第23号(2024年5月15日公布)

正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」です。運送契約における取引の透明化を主眼とした改正で、2025年4月1日から実運送事業者を対象に施行されています。2026年4月1日からは貨物利用運送事業者(元請け・利用運送を行う事業者)にも同様の義務が拡大されます。

第2弾:「トラック適正化二法」(令和7年法律第60号・第61号、2025年6月成立)

正式名称は「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和7年法律第60号)と「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」(令和7年法律第61号)です。議員立法として成立し、トラックドライバーの経済的・社会的地位の向上を目的に掲げています。2026年4月1日から一部が施行され、許可の更新制導入や適正原価を下回る運賃の制限といった項目は、公布から3年以内に施行される予定です。

時期 施行される主な内容
2025年4月1日 書面交付義務/健全化措置(努力義務)/運送利用管理規程・運送利用管理者の選任/実運送体制管理簿の作成・保存(実運送事業者)
2026年4月1日 貨物利用運送事業者への義務拡大/白トラ規制の強化(荷主等への規制)/多重下請け構造の制限(委託次数を2次までとする努力義務)
公布から3年以内(〜2028年頃) 許可の更新制(5年ごと)の導入/適正原価を下回る運賃・料金の制限

「もう始まっている部分」と「これから始まる部分」が混在している点に注意が必要です。書面交付義務や実運送体制管理簿は、すでに実運送事業者には義務化されています。一方、許可の更新制のようなインパクトの大きい制度は、まだ少し先です。

霊柩運送事業はなぜこの法律の対象なのか

民法上、人は亡くなった時点で権利義務の主体ではなくなり、遺体は法的には「物」として扱われます。そのため霊柩による搬送は「貨物の運送」に該当し、貨物自動車運送事業法に基づく「一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)」の許可が必要となり、緑ナンバーの取得が義務付けられています。

霊柩限定の許可には特例もあります。通常の一般貨物運送事業は最低5両の車両が必要ですが、霊柩限定の場合は1両からでも許可を取得でき、車両数が5両未満であれば資格を持つ運行管理者・整備管理者の選任義務も緩和されます。個人事業や家族経営が多いこの業界の実情に配慮した制度です。

ただし、特例があるのはあくまで開業・運行管理の要件の部分であり、今回のトラック新法が定める「取引の適正化」「下請け構造の是正」「白トラ規制」「許可更新制」といった規制の枠組み自体から霊柩事業が除外されているわけではありません。霊柩運送事業者は紛れもなく「一般貨物自動車運送事業者」であり、今回の改正の当事者です。

改正内容を霊柩事業の現場に当てはめる

1. 書面交付義務と実運送体制管理簿

葬儀社から電話一本で搬送を依頼され、口頭のやり取りだけで搬送を実施するケースは少なくありません。今回の改正では、運送契約を締結する際に運賃・附帯業務の内容などを記載した書面の交付が義務付けられます。あわせて、実際に搬送を行った事業者の名称・許可番号・運転者名・車両番号・収受した運賃などを記載する「実運送体制管理簿」の作成・保存が求められます。

葬儀社が実質的な「元請け」、霊柩事業者が「実運送事業者」という構造になっているケースが多く、皆さまの許可番号や運転者名、車両情報を正確に伝える体制づくりが求められます。簡単な発注書・請書のフォーマットを用意することが、その第一歩になります。

2. 多重下請け構造の是正(委託次数を原則2次までに)

繁忙期に自社だけでは対応しきれず、提携先がさらに別の個人事業者に依頼する「孫請け」構造が生まれることがあります。今回の改正では、委託の階層を原則2次までに収める努力義務が課されます。自社が普段どこまでの階層で受発注しているかを一度棚卸ししておくことをお勧めします。

3. 適正原価・運賃の適正化

改正法では、国土交通大臣が事業運営に必要な費用を「適正原価」として示し、これを下回る運賃・料金での契約を制限する仕組みが導入されます。霊柩・寝台搬送の料金は葬儀プラン全体の中に一括りにされ、深夜割増や長距離加算、待機時間などの実費が十分に反映されていないケースも見られます。燃料費・車両維持費・深夜対応の人件費を可視化しておくことが、適正原価を主張するための土台になります。

4. 白トラ規制の強化と荷主罰則

緑ナンバーを持たない自家用車両(白ナンバー)による有償運送、いわゆる「白トラ」に対する規制が強化され、2026年4月以降は無許可事業者に搬送を依頼した側、つまり葬儀社等にも罰則が及びます。これにより葬儀社側は「依頼先が正規の緑ナンバー事業者かどうか」を確認する責任を負うことになります。正規の許可を持つ事業者にとっては、許可番号や事業の適法性を明確に打ち出すことが、今後の営業上の差別化要因になります。

5. 許可の更新制(5年ごと)の導入

これまで貨物自動車運送事業の許可は一度取得すれば実質的に無期限でしたが、今回の改正で5年ごとの更新制が導入されます。施行は公布から3年以内で、更新のたびに安全管理体制や法令遵守の状況が確認される見込みです。5両未満の特例で運行管理者・整備管理者の選任義務がない場合でも、点呼記録や車両点検、事故・処分歴といった実態が問われなくなるわけではないため、日頃からの記録整備が重要になります。

6. 運行管理体制とドライバーの処遇適正化

「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」は、トラックドライバーの経済的・社会的地位の向上を目的の一つに掲げています。深夜対応や長時間の待機、精神的な負荷の大きさなど、霊柩運転者の仕事の負担は決して軽くありません。適正な運賃を確保し、それをドライバーの処遇に還元する流れは、単なる法令対応ではなく事業の持続可能性そのものに関わる経営課題です。

今日から始める実務対応チェックリスト

  • 自社の許可番号・事業者情報を、名刺・見積書・ウェブサイトに明記しているか確認する
  • 葬儀社との取引について、簡単な発注書・請書のひな形を用意する(口頭発注からの脱却)
  • 協力会社・再委託先がある場合、緑ナンバー保有と許可番号を書面で確認する運用にする
  • 実運送体制管理簿に記載され得る自社情報(許可番号・運転者名・車両番号)をすぐ提示できる形で整理しておく
  • 搬送1件あたりの実費(燃料費・深夜割増・待機時間)を可視化し、料金表を見直す
  • 車両が5両未満か以上かを確認し、運行管理者・整備管理者体制の要否を再点検する
  • 点呼記録・車両点検記録など、更新制導入を見据えた日常的な記録習慣を整える

まとめ

今回の法改正は、霊柩運送事業もその当事者です。「もう始まっている対応」と「これから始まる対応」を区別して優先順位をつけ、正規事業者であることを明確にすることが、規制対応であると同時に営業上の強みにもなります。ご遺族の大切な方をお預かりするという仕事の重みに見合った、適正な取引環境を作るための制度と捉え、自社の体制を見直すきっかけにしていただければと思います。

許可の更新制や適正原価規制は、政令による詳細スケジュールが別途定められる見込みです。個別の許可・契約・法令適用については、最新の公布内容および所轄の運輸支局・専門家へのご確認をお願いいたします。制度対応にご不安な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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