運送業の許可を取得するための「資金の要件」について
この記事では、運送業の許可を取得するための「資金の要件」について、解説します。
運送業の許可を取得するためには、事業開始に必要な資金を確保し、その証明を行うことが求められます。この資金要件は、事業の安定性と信頼性を確保するための重要な基準となっています。
1. 資金要件の概要
運送業許可を取得する際、申請者は事業開始に必要な資金(所要資金)を有していることを証明しなければなりません。この所要資金は、以下の費用を合算したものです:
- 人件費:役員報酬や従業員の給与、手当、社会保険料などの6か月分。
- 車両費:車両の購入費用全額、リースの場合は12か月分のリース料、分割払いの場合は頭金と12か月分の支払額。
- 車両関連税金:自動車税、自動車重量税、自動車取得税の1年分。
- 保険料:自賠責保険や任意保険の1年分。
- 燃料費:月間の総燃料費×リッターあたりの平均価格の6か月分。
- 修繕費:外注修繕費やタイヤ交換費用の6か月分。
- 事務所・駐車場費用:購入の場合は全額、賃貸の場合は12か月分の賃料、分割払いの場合は頭金と12か月分の支払額。
- 水道光熱費・通信費:6か月分。
- その他経費:広告費や什器・備品の購入費用など。
- 登録免許税:運送業許可取得時に納める12万円。
これらの費用を合計した所要資金と同等以上の自己資金を有していることが求められます。
2. 自己資金の証明方法
自己資金の証明には、金融機関が発行する残高証明書が必要です。申請者が個人事業主の場合は事業主名義の口座、法人の場合は法人名義の口座の残高証明書を提出します。この残高証明書は、申請受付日から遡って2週間以内に発行されたものでなければなりません。
3. 残高証明書提出のタイミング
残高証明書の提出は、通常2回求められます:
- 1回目:運送業許可申請受付時。
- 2回目:申請から約2~3か月後、運輸局から指定された時点。
この期間中、自己資金は所要資金以上の額を維持している必要があります。一時的な入金で残高を増やす「見せ金」は認められず、継続的に資金を保持していることが重要です。
4. 資金計画の重要性
運送業の開業には、一般的に1,500万円~2,500万円の資金が必要とされています。これは、車両の種類や台数、新車・中古車の選択、営業所や駐車場の取得方法(購入・賃貸)などによって変動します。例えば、営業所・駐車場を賃貸し、4トントラック5台を中古で購入する場合、約1,800万円~2,000万円の資金が必要とされています。
5. 注意点
- 資金の出所:自己資金は合法的に得たものでなければなりません。不正な手段で集めた資金は認められません。
- 資金の維持:申請から許可取得までの間、自己資金は減少させないよう注意が必要です。
- 専門家への相談:資金計画や申請手続きは複雑なため、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
運送業の許可取得には、厳格な資金要件が設けられています。事前に十分な資金計画を立て、必要な自己資金を確保することが、スムーズな許可取得への第一歩となります。最新の情報や詳細については、専門家や関係機関にお問い合わせください。