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運送会社のM&A:株式譲渡による許認可手続き完全ガイド

運送会社のM&A:株式譲渡による許認可手続き完全ガイド

近年、運送業界では後継者不足やドライバーの長時間労働問題など、多くの経営課題が浮き彫りになっています。

これらの問題を解決するために、M&A(企業の合併・買収)を活用する企業が増えています。特に、株式譲渡を活用したM&Aは、手続きの簡便さや許認可の継続性といったメリットがあるため、運送業界でも多く採用されています。

しかし、株式譲渡を行った際に必要となる許認可申請手続きを適切に行わないと、行政指導や業務停止命令などのリスクが生じる可能性があります。本稿では、運送会社の株式譲渡によるM&Aにおける許認可申請手続きについて、具体的かつ詳細に解説します。


運送業界におけるM&Aの背景

運送業界では、少子高齢化による後継者不足や、ドライバーの労働環境改善の必要性が高まっています。そのため、事業承継の手段としてM&Aを活用するケースが増加しています。

M&Aにはさまざまな手法がありますが、運送業界では以下の3つの手法が主に活用されています。

  1. 合併:2つ以上の会社を1つの会社に統合する手法
  2. 会社分割:事業の一部を別の会社に分割して譲渡する手法
  3. 株式譲渡:既存の会社の株式を他の企業または個人に譲渡し、経営権を移転する手法

この中でも「株式譲渡」は、最も手続きが簡単であり、行政の認可を新たに取得する必要がないため、運送会社のM&Aで広く活用されています。


株式譲渡とは?

株式譲渡とは、会社の経営権を持つ株主が、自身の保有する株式を第三者に譲渡することで、経営権を移転するM&A手法です。

株式譲渡を行った場合、以下の特徴があります。

  • 会社の法人格や許認可はそのまま維持される
  • 事業計画変更認可の申請が不要(ただし、事業計画に変更が伴う場合は別途手続きが必要)
  • 会社の資産・負債・契約関係がそのまま引き継がれる

一見すると、株式譲渡では運輸局への許認可手続きが不要に思われがちですが、実際にはさまざまな場面で変更届出が必要となるケースがあります。


株式譲渡に伴う許認可申請手続き

株式譲渡を行うことで、運送会社の経営者が変わることになります。この際、運輸局への変更届出が必要なケースと不要なケースがあります。

許認可変更手続きが不要なケース

  • 株式譲渡による株主の変更のみで、会社の名称・所在地・役員に変更がない場合
  • 営業所・車庫・休憩施設の変更を行わない場合

上記の場合、国土交通省(地方運輸局)への認可申請や届出は不要です。

許認可変更手続きが必要なケース

株式譲渡後に以下の変更を行う場合は、必ず運輸局への変更届出が必要となります。

会社名の変更

新しい親会社の名前を取り入れたり、ブランド戦略として社名を変更するケースがあります。この場合、

  1. 法務局で商号変更登記を行う
  2. 運輸局に社名変更の届出を行う
  3. 車検証の書換えを行う
  4. 車体表示(トラックの社名表記)の変更を行う
本店所在地・主たる事務所の変更

親会社と同じ所在地に本店を移転する場合や、業務効率化のために事務所を統合する場合は、

  1. 法務局で本店移転登記を行う
  2. 運輸局に本店所在地変更届出を行う
  3. 車検証の書換えを行う
役員の変更

新経営陣を迎え入れる場合、

  1. 法務局で役員変更登記を行う
  2. 運輸局に役員変更届出を行う
  3. 新任役員が欠格事由に該当しないことを確認し、宣誓書を提出する
運行管理者・整備管理者の変更

前経営者が運行管理者や整備管理者を兼任していた場合、新たな管理者を選任する必要があります。この際、

  1. 運輸局に運行管理者・整備管理者の変更届出を行う
  2. 新任者の資格要件を満たしていることを確認する
貨物自動車利用運送を行う場合

譲受会社が新たに利用運送(他社の車両を使った運送)を行う場合は、

  1. 貨物自動車利用運送の認可申請を行う
  2. 庸車先として承継会社を追加する変更届出を行う

まとめ

運送会社のM&Aにおいて、株式譲渡は手続きが比較的簡単な手法ですが、会社名変更や役員変更など、さまざまな場面で許認可申請が必要となるケースがあります。これらの届出を怠ると、巡回指導や監査時に指摘を受け、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。

M&Aでは財務や契約条件だけでなく、許認可の適正な管理も非常に重要です。運送業のM&Aを検討している企業は、事前に専門家に相談し、適切な手続きを行うようにしましょう。

 

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