【徹底解説】運送会社の行政処分と違反点数制度ってなに?
【徹底解説】運送会社の行政処分と違反点数制度ってなに?
今回は、運送会社の行政処分と違反点数制度について、わかりやすく解説いたします。運送業を営む上で、法令遵守は避けて通れない重要なテーマです。ぜひ最後までご覧ください。
行政処分とは何か
まず、行政処分とは、運送事業者が法令に違反した際に、国土交通省や地方運輸局から科される制裁措置のことです。これらの処分は、運送業界の安全性と信頼性を維持するために設けられています。
行政処分の種類
運送会社に対する行政処分は、大きく以下の三つに分類されます。
- 車両使用停止(処分日車数制度)
- 事業停止
- 許可取消
車両使用停止(処分日車数制度)
この処分は、特定の車両を一定期間使用できなくするものです。具体的には、該当する車両のナンバープレートを返納し、公道での運行を禁止します。処分の期間や対象車両数は、違反の内容や事業所の保有車両数によって決まります。
処分日車数の計算方法
処分日車数とは、使用停止となる車両の台数と日数を掛け合わせた数値です。例えば、1台の車両を10日間使用停止にする場合は「10日車」となります。保有車両数に応じて、以下のように処分車両数が決定されます。
- 保有車両数が10台以下の場合:1台の車両を処分日車数分停止
- 保有車両数が11~30台の場合:2台の車両を処分日車数の半分ずつ停止
- 保有車両数が31~60台の場合:3台の車両を処分日車数の3分の1ずつ停止
このように、保有車両数が多い場合は、複数の車両で処分日車数を分担する形となります。
事業停止
事業停止処分は、特定の営業所や事業者全体に対して、一定期間、運送業務の停止を命じるものです。通常、30日間の停止が基本となりますが、違反の内容や累積点数によって期間が延長されることもあります。
事業停止の主な理由
以下のような重大な法令違反があった場合、事業停止処分が科されることがあります。
- 運行管理者や整備管理者の未選任
- 全運転者に対する点呼の未実施
- 全車両の定期点検整備の未実施
- 名義貸しや事業の貸渡し
- 監査の拒否や虚偽の陳述
これらの違反は、運送業の安全性を著しく損なうため、厳しい処分の対象となります。
許可取消
最も重い処分が許可取消です。これは、運送業の許可自体が取り消され、事業の継続が不可能になるものです。主に以下のような場合に適用されます。
- 累積違反点数が81点以上となった場合
- 過去2年間に3回の事業停止処分を受け、その後再度重大な違反を行った場合
- 車両使用停止や事業停止の命令に従わなかった場合
許可取消処分を受けると、再度許可を取得するまでに長い期間が必要となり、事業の再開は非常に困難になります。
違反点数制度とは
違反点数制度は、運送事業者の法令遵守状況を数値化し、累積点数に応じて行政処分を科す仕組みです。具体的には、以下のように点数が付与されます。
- 処分日車数10日車ごとに1点
- 事業停止処分に該当する違反行為ごとに30点
これらの点数は、営業所単位で管理され、原則として3年間累積されます。
累積違反点数による処分の流れ
累積違反点数が一定の基準を超えると、以下のような処分が科されます。
- 30点以下で270日車以上の処分日車数:該当営業所の事業停止
- 31点以上で180日車以上の処分日車数:該当営業所の事業停止
- 51点以上80点以下:管轄区域内の全営業所の事業停止
- 81点以上:許可取消
このように、累積点数が増えるほど、処分の内容も厳しくなります。
違反点数のリセット条件
累積された違反点数は、一定の条件を満たすことでリセットされます。基本的には、行政処分を受けた日から3年間無事故・無違反であれば、点数は消滅します。ただし、以下の条件を満たす場合は、2年間でのリセットが可能です。
- 行政処分を受けた日以前の2年間に処分を受けていない
- 安全性優良事業所(Gマーク)に認定されている
- 処分後2年間、所要の措置を履行し、再度の処分を受けていない
- 処分後2年間、重大な事故や違反を起こしていない
これらの条件を満たすことで、違反点数の累積期間を短縮することができます。
行政処分を避けるために
運送事業者が行政処分を避けるためには、日常的な法令遵守と安全管理が不可欠です。具体的には、以下の点に注意しましょう。
- 運行管理者や整備管理者の適切な選任と配置
- 運転者への確実な点呼の実施
車両の定期点検整備の徹底
運送事業において、車両の安全管理は最も重要なポイントの一つです。日常点検・定期点検を適切に実施し、故障や不具合がないかを常にチェックしましょう。特に、タイヤの摩耗、ブレーキの効き具合、エンジンオイルの漏れなどは重大な事故につながる可能性があるため、点検を怠らないことが重要です。
過労運転の防止
近年、働き方改革の流れの中で、ドライバーの労働環境の改善が強く求められています。長時間労働や過労運転は、重大な事故を引き起こす原因となるため、適切な労働時間の管理が必要です。特に、拘束時間や休憩時間の管理を徹底し、違反にならないよう注意しましょう。
過積載運行の禁止
過積載は、車両の制御を難しくし、ブレーキの効きが悪くなるなど事故リスクを高める行為です。また、道路の損傷を引き起こす原因ともなるため、厳しく取り締まられています。運送会社は、荷主としっかり協議し、適正な積載量での運行を徹底することが求められます。
監査や巡回指導への対応
監査や巡回指導が入る際は、事前にしっかり準備を行い、法令違反がないか確認しましょう。特に、**帳票類の管理(運転日報・点呼記録・整備記録など)**は、監査で必ずチェックされるポイントです。帳票類の不備が発覚すると、それだけで違反点数が加算される場合もあります。
最新の行政処分の強化ポイント
行政処分は、年々厳しくなっています。ここでは、最近改正された主なポイントについて解説します。
① 過積載に対する処分の強化
過積載に対する処分は、違反回数に応じて厳しくなります。
- 初回の違反:車両使用停止
- 2回目の違反:停止期間延長
- 3回目の違反:輸送の安全確保命令発動
- 4回目以降:特別監査または事業許可取消
また、過積載の程度によっても処分日車数が変わります。
近年、ドライバーの長時間労働や過労運転が社会問題となっており、行政処分も厳格化されています。以下のような違反が発覚すると、車両使用停止や事業停止などの処分が科される可能性があります。
- 運転時間の超過(連続運転時間4時間以上、1日最大運転時間の超過など)
- 休息期間の未確保(日単位の休息時間不足、連続勤務日数の超過など)
- 適切な労働管理の未実施(運行管理者による労働時間管理の不備など)
特に、長時間運転による事故が発生した場合、事業停止や許可取消にまで至るケースもあるため、注意が必要です。
行政処分を回避するために
運送事業者が行政処分を回避し、法令遵守を徹底するためには、日々の業務改善が必要です。具体的な対策として、以下のポイントを押さえましょう。
1. 運行管理体制の強化
- 運行管理者を適切に配置し、業務を徹底させる
- 点呼を確実に実施し、アルコールチェックや健康状態の確認を徹底する
- 運行記録(デジタコデータ・運転日報)を適切に保管する
- 事故発生時の報告体制を明確にする
2. 適切な労務管理
- ドライバーの勤務時間を適切に管理し、過労運転を防止する
- 休日・休憩時間を確実に確保し、疲労軽減を図る
- Gマーク(安全性優良事業所)の取得を目指す
3. 車両管理の徹底
- 定期点検・日常点検を確実に実施
- 整備管理者を適切に配置し、整備記録を管理
- タイヤ、ブレーキ、エンジンなどの点検を強化し、故障・事故を未然に防ぐ
4. 荷主との適切な関係構築
- 過積載運行を行わないため、適正な運送契約を結ぶ
- 不適切な運賃・労働条件を強制されないよう、交渉力を強化
- 適正な荷待ち時間を確保し、長時間拘束を防止
5. 監査・巡回指導への事前対策
- 監査・巡回指導が入る前に、自社の法令遵守状況をチェック
- 行政書士などの専門家と連携し、監査対応を強化
- 過去の違反履歴を把握し、再発防止策を徹底
ネガティブリストの公表
違反点数が累積し、一定の基準を超えると、運輸局のホームページ上で事業者名が公表されます。これはいわゆる「ネガティブリスト」と呼ばれ、企業の信用に大きな影響を及ぼします。
- 累積違反点数が20点を超えると、四半期ごとに公表
- 200日車を超える車両使用停止処分を受けると公表
- 悪質な違反事業者として認識され、取引先や求職者からの信頼を失う
このように、ネガティブリストに掲載されると、運送業者としての信頼回復は非常に困難となるため、日頃から法令遵守を徹底することが重要です。
まとめ
今回は、運送会社の行政処分と違反点数制度について詳しく解説しました。
重要なポイントをおさらいすると
- 行政処分には「車両使用停止」「事業停止」「許可取消」の3種類がある
- 違反点数制度により、法令違反の累積点数が増えると厳しい処分が科される
- 最近の改正で過積載や過労運転に対する処分が強化されている
- 行政処分を回避するためには、運行管理・労務管理・車両管理を徹底することが不可欠
- 違反を重ねると「ネガティブリスト」に掲載され、企業の信用に大きな影響を与える
運送業界では、年々規制が厳しくなり、法令遵守の重要性が増しています。今後も適切な管理体制を整え、安全で健全な事業運営を目指しましょう。
もし行政処分や監査対応でお困りの方は、Ican行政書士事務所までお気軽にご相談ください。
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